黒川智生のアメリカSPA業態研究
-1995ワシントン編 vol.3-

シェアする:

Share on facebook
Share on twitter
Share on pinterest

※1995年1月 ワシントン Fashion Centre at Pentagon City ここがアメリカSPAブランド研究の原点。

 

「エクスプレス」が店舗展開を始めたのは1980年でした。この時「ザ・リミテッド」の店舗数は400店になり、全米の有力ショッピングセンターでかなり見かける存在となっていたでしょう。

 

 2つ目のチェーンとなると、ターゲットはどうなっていたのでしょうか?「ザ・リミテッド」第二次世界大戦後に生まれたベビーブーマーのボリュームラインをターゲットにしていたのに対し、よりファッションに敏感な人々を対象にして、やや安価にスタイルを求められるように「エクスプレス」は位置づけられたようです。

 

 主力業態のコンセプトと顧客対象が明確化される中で、次なる対象、もしくは、嗜好変化をリアルに捉える為に新店舗群を設定するのはよくあるケースですが、次の段階として、あるタイミングで、次の目標となる”既存融合”を目指すことになり、これは、多くない成功例の一つになってゆくのです。

 

 それは、1985年秋に、ニューヨークのマディソン街で「ザ・リミテッド」「エクスプレス」「ビクトリアズシークレット」の同グループ3店が一か所に揃う大型店が開設され、複合の相乗効果(集客力強化、買い回り拡大など)が具現化してゆくことで示されました。

 

 以後の成長過程から、様々な課題が生まれたことは前回にも書きましたが、1995年のワシントンでは、まず「エクスプレス」自体がどうだったでしょうか?

このチェーンの標準店舗は150坪とされましたが、同店舗は少し大きい感じでした。

  • 通路から、ガラス越しに店内を見渡せる(商品の種類を確認できる)
  • 同一品種内で、比較対象になる商品が近くに陳列されていた(これは「ザ・リミテッド」と同じ)
  • 内装イメージ、通路幅ともにゆったりしており、ロアーモデレートプライスの売場としては買い物しやすく、複数点数の購入も促せるのか?

というのが印象でした。

 お客様の在店時間と購買点数はある程度比例するでしょう。そこに買いやすい価格とわかりやすいコーディネートとが確保されれば、大型店舗となっても、ある程度の効率(単位面積当たりの売上、家賃とのバランス、各種経費バランス)が保たれてゆきます。まずは入店客数を稼ぐべく、かなり派手なウィンドーイメージで惹きつけ、時期別のホットアイテムを店入口付近から動線上にレイアウトしてゆく方式を定着させたと思われます。

 さらにこの時に学んだのは、モール内での同グループのチェーン配置でした。

モール中央部の好立地で、

  • GROUND LEVEL

⇒「エクスプレス」「ストラクチャー(紳士服)」「ビクトリアズシークレット(下着)」

  • SECOND LEVEL

⇒「ザ・エクスプレス」

  • THIRD LEVEL

「リミテッドトゥー(ティーンズ)」「カシーク(ミセス向け下着)」

キーテナントとして配置されており、全体集客の鍵、或いは、お客様の来館目的?になっていることがわかりました。まず、これを受け止めるとして、但し、さらに考えるべき環境も同時にありました。

 95年当時、同グループの婦人服部門は不振であり、他の部門(紳士服、下着ランジェリー、パーソナルケア)が新たな成長軸になりつつありました。これは前回にも少し触れました。こうした状況もあって、チェーンミックスで、幾つかの切り口、例えばカップルとか、親子とか、1人の女性でインナー、アウターとかのグループ店舗間の同時購入を促進する意図もあったかもしれません。このやり方は、その後各地で標準化され、進化しましたね。

 「ザ・リミテッド」「エクスプレス」などのレギュラーチェーンが提案するスタイルが顧客から飽きられ、また、嗜好変化に対応できず、別の品種の集積、編集の業態が抬頭してゆく。これは進化の段階でほぼ起きてきますが、次回はその姿を同社の別チェーンの動きを含めて、見てゆきたいと思います。

*参考文献;

桜井千恵子著『リミテッド社はなぜ世界最大になれたか』 商業界1995

『繊維新聞』1994 

シェアする:

Share on facebook
Share on twitter
Share on pinterest